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AI LIFE

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足すのではなく、組み直す。

No.012 5本のトピック読了目安 6分文 

AIを「足す」か、流れごと組み直すか。白書の事例に学ぶ判断軸

既存業務にAIを差し込むだけでは、効果は個人の効率化にとどまりやすいものです。総務省の情報通信白書が採り上げた中外製薬とアイニコグループの事例から、「足す」と「組み直す」の判断軸を整理します。

今号のテーマ、「足す」と「組み直す」は、段階が違う、中外製薬:人間前提のプロセスを書き換える、アイニコグループ:個人利用から、会社の取組へ、まとめ:差し込むか、描き直すかのチェック

今号のテーマ

きのうは、費用・回収・担当の3点で導入の可否をざっくり決める話でした。今日はその先です。

道具を入れたあと、多くの会社で分かれるのが次の分岐です。いまある仕事の途中にAIを差し込むのか。AIがある前提で、仕事の流れごと組み直すのか。

参照するのは、総務省の令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章です。先進事例として採り上げられた中外製薬とアイニコグループの記述、および効果創出のステップを手がかりに、中小企業の現場で使える判断軸に落とします。大企業の仕組みをそのまま真似る話ではありません。

1. 「足す」と「組み直す」は、段階が違う

白書は、AI導入・活用による効果創出を段階で整理しています。

第一歩は、汎用の生成AIを個人作業で使うことです。文書の下書き、要約、調べものの補助など、いまの手順の一部を速くする段階です。投資は比較的少なく、特性と向き不向きを社内で共有しやすい、とされています。

その先が、AI活用を前提とした業務変革です。白書は、人間が一連の業務を行う前提で設計されたプロセスをそのままにして効率化だけを狙うのではなく、業務プロセス全体をAI前提で変えていく方向を示しています。ここで問われるのは、どのタスクをAIの補助とし、どのタスクをAIに実行させ、どこで人が責任を取るか、という役割分担です(効果創出のステップ、重要となる要素)。

言い換えると、「足す」はいまの流れの上にAIを載せる判断です。「組み直す」は、流れそのものを描き直す判断です。どちらが正解かではなく、いま自社がどちらの段階にいるかを見極めることが先です。

ここがポイント個人の作業が速くなったあとで止まっているなら、次に見るべきはツール追加ではなく、仕事の流れの設計です。

2. 中外製薬:人間前提のプロセスを書き換える

中外製薬の事例で、組み直しの考え方がはっきり出ているのは「AI Everywhere」の柱です。

白書によれば、同社は経営戦略「TOP I 2030」とデジタル戦略「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」のうえで、2025年にAIにフォーカスした「Chugai AI Strategy」を定めました。柱は「AI Everyday」「AI Everywhere」「AI Transformation」の3つです。

「AI Everyday」では、全社員が業務の質とスピード向上のためにAIを使う段階とされています。内製の生成AIアプリ「Chugai AI Assistant」は、約7,800名の社員向けで、平均約5,400人のユニークユーザがいる、と白書は記しています。

「AI Everywhere」では、人間が一連の業務を行う前提で設計されていたビジネスプロセスを全て書き換えていく必要がある、との認識の下、全社的にビジネスプロセスへAIを埋め込み、ビジネス全体の構造変革に取り組んでいる、とされています。研究開発ではAI創薬基盤「MALEXA」等を活用し、創薬プロセス等の変革にも取り組んでいる、とあります。

あわせて同社は、個人作業の効率化とは異なり、人間とAIの役割分担を十分に検討したうえでガバナンスに基づき活用すべきだと考え、人が判断・確認を介在させる「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を重視して再設計に取り組む必要がある、としています(中外製薬の事例)。

中小企業にそのまま移植する組織図ではありません。持ち帰るのは次の軸です。いまの手順書は、人が最初から最後までやる前提で書かれていないか。AIを足す前に、どこで人が責任を持ち、どこをAIに任せるかを書き換える余地はないか。

ここがポイント組み直しの本体は、ツール選定より先に、人とAIの役割を手順の単位で決めることです。

3. アイニコグループ:個人利用から、会社の取組へ

読者に近い規模感として、白書が採り上げた中小企業の事例がアイニコグループ株式会社です。奈良県や京都府南部を中心に、注文住宅、リフォーム、介護、保育、DXコンサルティング等を手がける、と紹介されています。

白書によれば、同社ではAI活用プロジェクトの開始以前からChatGPT等は導入されていたものの、個人利用に留まっており、業務全体への展開が課題でした。そこで専門の支援業者とも連携し、全社員向けの勉強会のあと、1年間の集中プロジェクトを実施しました。全10事業部から2名程度、計21名が参加し、各事業部の課題を起点に目標を設定。週1回1時間程度の勉強会と、3か月・6か月・12か月の成果共有を置いた、とされています。

12か月目の最終報告では、全10事業部の合計で年間2,247時間分の業務時間削減等の成果が報告された、と白書は記しています。内訳の例として、広報部門で複数の社内業務の自動化による年間880時間、介護事業部門で送迎ルート最適化等による年間170時間、不動産事業部門で問合せ対応のテンプレート化・自動化による年間897時間が挙げられています(数値はアイニコグループ提供、2026年4月1日時点、と注記)。

成果の背景として、同社には創業初期からの「仕組みづくり」の文化があり、業務の標準化・マニュアル化、業務フローやチェックシートの整備、手順の動画化などが習慣になっていた、とされています。専門家の支援が特に有効だった局面として、その課題をAIで解くべきかどうかの判断と、始動後の個別相談が挙げられています。安全面では、個人情報を入力しないこと、オプトアウト設定を必ず行うこと等を最低限のルールとして周知する方針、とあります(アイニコグループの事例)。

ここから分かるのは、ツールを配っただけでは会社の取組にならない、ということです。課題の単位で目標を置き、期限つきで測り、仕組み化の土台の上で広げる。中小企業でも、「足す」から「組み直す」へ進む型は、白書の記述のなかに具体的に示されています。

ここがポイント個人利用で止まっているなら、人数を増やす前に、事業部の課題・目標・測定の区切りを決めることが先です。

まとめ:差し込むか、描き直すかのチェック

今日の判断軸を、導入後のチェックにすると次のとおりです。

  1. いまの段階はどれか個人作業の効率化か、業務プロセス全体の組み直しか。白書の段階整理に照らして位置を書く
  2. 手順書の前提は何か人が最初から最後までやる前提のまま、途中にAIだけ足していないか
  3. 役割分担は書けているかAIの補助/AIの実行/人が責任を取る確認、の3つに分けられているか
  4. 測る単位はあるか事業や部門ごとに、何時間・何件を何か月で見るかが決まっているか

きのう決めた費用・回収・担当は、このチェックの土台です。担当がいないまま組み直しに入ると、個人の工夫の寄せ集めに戻りやすくなります。

あすは、浮いた時間を「削減時間」だけで終わらせず、売上側の指標で効果を測る話につなげます。

自社のどの業務から組み直すか。一緒に整理します。

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