毎朝更新中小企業の経営者のための、AI活用誌No.016既刊 16号

AI LIFE

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持たないデータは漏れない。

No.016 6本のトピック読了目安 5分文 

漏れたのは「今のお客さん」だけじゃなかった。古いデータを何年残すか、先に決める

10/30に公表された2件の漏えいでは、退会した人や過去の応募者の情報まで対象になっていました。「念のため」で残した古いデータは、事故のときに被害を広げます。何を、いつまで残すか。残す・消すを決めるのは人の仕事です。

今号のテーマ、退会した人の情報も、対象に入っていた、一番多かったのは「お客さん」ではなく「応募してきた人」、法律は「必要がなくなったら消すよう努める」、残す・消すを決めるのは人。棚卸しはAIに手伝わせてもいい、まとめ 持っていないデータは、漏れない

今号のテーマ

今週は、経営者からよく出る質問(10/26・10/29)と、AIと人の線引き(10/30)を続けてきました。 きのうの僕の答えは「作業はAI、判断は人間」です。

土曜日の今日は、少し視点を変えます。きのう(10月30日)に公表された情報漏えいのお知らせを2つ読んで、目にとまったことがありました。 漏れたかもしれない情報が、「今のお客さん」のものだけではなかったことです。

10/29号では「入れてよい情報を決める」と書きました。今日はその手前の話で、そもそも何を残しておくかです。

1. 退会した人の情報も、対象に入っていた

株式会社良品計画は10月30日、無印良品の公式アプリ「MUJIアプリ」で、お客さま情報の一部が外部に流出した可能性があると発表しました。

  • 流出した可能性がある情報:メールアドレス、生年月日、性別
  • 含まれない情報:クレジットカード情報、氏名、住所、電話番号など
  • 対象件数:最大約2,726万件。退会したお客さまの情報を含むとされています

発表の時点では、ダークウェブなどへの流出や、情報を悪用した被害は確認されていないとしています。

僕が気になったのは、件数の大きさよりも「退会したお客さまの情報を含む」という一文です。 退会した人は、もう会社のサービスを使っていません。それでもデータは残っていて、事故のときには対象に入りました。

ここがポイントお客さんがやめても、データは自動では消えません。消すと決めて、実際に消さないかぎり残り続けます。

2. 一番多かったのは「お客さん」ではなく「応募してきた人」

同じ10月30日、タクシー・ハイヤーの日本交通株式会社は、7月11日に起きた自社システムへの不正アクセスについて「第6報」を出しました。漏えいした可能性がある人を、6つの区分に分けて公表しています。

対象 人数
採用選考に応募した人(過去の応募者を含む) 約107,900人
乗務員が関わった事故などの相手方 約72,000人
乗務員・職員(退職者を含む) 約60,100人
従業員の家族 約37,700人
ハイヤーのお客さま 約13,100人
取引先の担当者 約2,100人

ハイヤーのお客さまは約13,100人。採用選考に応募した人は約107,900人で、お客さまの8倍以上です。 応募した人の区分には、運転免許証・顔写真・銀行口座の情報を含む場合がある、と書かれています。なお、タクシーを利用したお客さまの配車・乗車の情報は対象に含まれていないとしています。

同じ第6報の再発防止策には、「個人情報の保管期間に関するルールの策定と、ルールに基づく削除の実施」が、実施した対策として入っています。

中小企業でも、採用に応募してきた人の履歴書、辞めた社員の書類、昔のキャンペーンの応募者リスト、取引が終わった相手の連絡先などが、共有フォルダやメールの添付に残っていないでしょうか。 規模は違っても、「お客さんの情報だけ守ればいい」とは言えない、という点は同じです。

ここがポイント守るべきデータは、お客さんの名簿だけではありません。応募してきた人、辞めた人、事故やトラブルの相手方の情報も、会社の中に溜まっています。

3. 法律は「必要がなくなったら消すよう努める」

個人情報保護法の第22条には、こう書かれています。

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 (個人情報の保護に関する法律 第22条)

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、この条文について次のように説明しています。

  • 正確さを保つ方法の一つとして「保存期間の設定等」を挙げている
  • 「利用する必要がなくなったとき」の例として、キャンペーンの懸賞品を送り終え、届かなかったときの対応などのための合理的な期間が過ぎた場合を挙げている
  • 「消去」には、データを削除するほか、特定の個人を識別できないようにすることも含む
  • 法令で保存期間が定められている場合は、この限りではない

条文は「努めなければならない」です。ガイドラインも、こうした事項は従わなかったことで直ちに法違反と判断されるものではない、としています。 それでも、使い終わったデータをいつまでも持ち続けてよい、という意味でもありません。法律で保存期間が決まっている書類は、その期間を守ります(期間は顧問の税理士・社会保険労務士などに確認してください)。

ここがポイント「念のため残す」の反対は「全部消す」ではありません。残す理由と期限を決めて、期限が来たら消す、です。

4. 残す・消すを決めるのは人。棚卸しはAIに手伝わせてもいい

きのうの線引きに当てはめると、こうなります。

  • 判断(人):このデータを残すか消すか。いつまで残すか。誰が消すか
  • 作業(AIに手伝わせてよい):社内にどんなデータがあるかの一覧づくり、保管ルールの文案、確認用のチェックリストづくり

ひとつ注意があります。AIに棚卸しを手伝わせるときは、名簿そのものを貼り付けないこと。 「応募者フォルダ」「退会者リスト」のようなフォルダ名や、「氏名・住所・電話」のような項目名だけを渡せば、一覧づくりには十分です。10/29号で書いた「個人情報は原則入れない」と同じ線です。

土曜日の宿題として、次の5つを紙に書き出してみてください。

  1. 退会したお客さんの情報は、どこに、いつの分から残っているか
  2. 不採用になった応募者の履歴書やメールは、何年分残っているか
  3. 辞めた社員の書類のうち、法律で保存が必要なものと、そうでないものは分けてあるか
  4. 終わったキャンペーン・イベントの応募者リストは、消したか
  5. 残すものそれぞれに、期限と、消す担当者が決まっているか

全部が埋まらなくても大丈夫です。どこに何があるかが見えるだけで、次に決めることがはっきりします。

ここがポイント残す・消すは経営の判断です。AIは一覧づくりの相棒にはなりますが、消すと決めるのは人です。

まとめ 持っていないデータは、漏れない

きのう公表された2件では、退会した人や、過去に応募してきた人の情報まで対象に入っていました。 攻撃を100%防ぐことはできません。でも、持っていないデータは漏れません。

  1. 守るべきデータは、お客さんの名簿だけではない(応募者・退職者・事故の相手方など)
  2. 法律は「必要がなくなったら消すよう努める」。残す理由と期限を決める
  3. 残す・消すの判断は人。棚卸しの作業はAIに手伝わせてよいが、名簿そのものは渡さない

今週の「よく出る質問」と「線引き」は、ここにもつながります。AIに何を入れるかの前に、会社が何を持っているかを決めておく、ということです。

自社の古いデータをどこから片づけるか、一緒に整理します。

Next Stepこの号を読んだあとに

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