
AIの利用は誰が決める?社長・部門長・担当で分ける承認・却下・例外
In three lines今日の3行
- 社長・部門長・担当の3層で置き場を分け、止める人の名前も書く
- 却下の条件と例外の上限を先に書き、認めた例外は記録して見直す
- 社長まで上げるのはお金と外に出る操作に絞り、禁止には代わりの通し方を添える
今日決めること
社長・部門長・担当の決裁の地図(却下の条件と例外の上限を含む)を1枚にまとめる担当者を社長が1人指名し、今週金曜(11/6)までに仕上げる期限を決める。
AI利用の承認・却下・例外は、社長・部門長・担当の3層で置き場を分けます。国のAI事業者ガイドラインとIPAの手引書をもとに、責任者の置き方、却下の条件の先出し、人の承認を絞る考え方を1枚の決裁の地図にまとめます。
今号のテーマ
きのう(11/3)は、推進役の最初の30日で、棚卸し・1ページのルール・確認者を揃える話でした。その前の11/2号では、社長が手放す範囲と残す範囲を表にしました。 今日はその続きです。現場がいちばん迷う一点、誰が承認し、誰が却下し、例外はどこで認めるかを、1枚の「決裁の地図」に落とします。
参照するのは、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン第1.2版」(2026年3月31日公表)のアカウンタビリティの項目と、IPA産業サイバーセキュリティセンターの中核人材育成プログラムのプロジェクトがまとめた「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」(第1版、2026年7月31日発行)の、ガバナンス体制・シャドーAI・人の承認の節です。調査の%は使いません。
1. 決裁は「社長・部門長・担当」の3層で足りる
何が起きた
手引書は、AIガバナンスの第一段階を「組織内における責任の所在を明確化し、部門横断で意思決定を行う体制を整備すること」としています(2.2)。そのうえで、全社の意思決定の最終権限を持つ責任者(CAIO)を置き、深刻なセキュリティ脅威が見つかったときに対象システムの一時停止や外部のAIの利用禁止を命じられる権限を、あらかじめ明文化しておくことが重要だ、としています(2.2.1)。AI事業者ガイドライン第1.2版も、アカウンタビリティの項目で「責任者を設定する」「責任の所在を明確化する」を挙げています。
中小企業に置き換えると、僕は次の3層で足りることが多いと考えています。
| 層 | 決めること | 例 |
|---|---|---|
| 社長(または経営会議) | 会社として使う/使わない、顧客データを扱う可否、例外の上限、止める判断 | 新しいAIの会社契約、個人アカウントの業務利用の可否 |
| 部門長 | 自部門での用途の可否、確認者の任命 | 営業資料の下書きに使う、請求データの入力は不可 |
| 担当 | ルール内での日常利用、迷ったときの相談 | 公開情報の要約、社内向けのたたき台 |
部門長がいない会社は、推進役か社長が兼ねます。11/2号の「残す」側が社長の列です。11/3号で名前を置いた確認者は、部門長の列で任命します。
日常の「ちょっと試す」まで社長決裁にすると、仕事が止まります。逆に、止める判断まで担当に任せると、線が崩れます。
要点
全部を社長決裁にしない。全部を現場任せにもしない。3層の地図を1枚にします。
自社でやること
表の3行を自社の言葉に置き換え、各行に決める人の名前を書きます。「止める」と言える人の名前も1つ入れます。
Top Story今日いちばん大事な話
2. 「却下」と「例外」を先に書く
どういうことか
承認の手順だけ決めて、却下と例外を書かないままにすると、申請のたびに社長が一から考えることになります。
手引書は、新しいAIを使いたいときの審査の仕組みを整え、現場の要望を吸い上げることが重要だとしています。そのうえで、審査の観点や却下になりやすい条件を前もって示しておけば、申請する側が自分で事前に判断しやすくなり、承認する側の負担も減って、早く承認できる、としています(2.3.2)。決裁の地図には、次の3つも書きます。
- 却下の例:個人の無料アカウントに顧客名簿を入れる、会社が認めていないAIエージェントでメールを送る
- 例外の取り方:期限・用途・確認者を書いて申請し、部門長または社長が認める
- 例外の上限:個人情報・契約金額・対外発信に関わるものは、例外でも担当ひとりでは認めない
例外を認めたら、記録を残します。AI事業者ガイドライン第1.2版は、AIの利用中に行われた意思決定などを、技術的に可能で合理的な範囲で追跡できる状態にしておくことを挙げています。手引書も、対策を定期的に見直すときの観点に「例外承認の妥当性」を入れています(3.5.2)。
要点
却下の条件を先に見せると、申請も承認も速くなります。例外は記録して、あとで見直します。
自社でやること
却下の例を3つと、例外の上限を1行書きます。地図の下に、例外を認めた日付・用途・認めた人を残す欄を作ります。
3. 地図がないと起きる、2つの渋滞
どういうことか
決裁の置き場が決まっていないと、次のどちらかが起きやすくなります。
- 全部が社長に上がる:試す速度が落ち、現場は個人アカウントに逃げる(シャドーAI)
- 確認が形だけになる:何でも承認に回すうちに、誰も中身を見なくなる
手引書は、過度に厳格なルールは利用者の回避(シャドーAIの増加など)を招き、かえってリスクを高める可能性があるとして、禁止一辺倒ではなく代わりの手段とセットでルールを作るのが望ましい、としています(2.3.1)。シャドーAIは多くの場合、悪意ではなく業務上の必要から生まれる、とも書いています(2.3.2)。
一方で、すべての出力に承認を求めると「承認疲れ」が起き、形だけの確認になるおそれがある、とも指摘しています。人の承認を必須にする例として挙げているのは、決済の実行、データの外部送信、システム設定の変更、顧客への回答送信です(6.1.3)。人の承認を挟むのは、こうした操作に絞れます。そのうち社長まで上げるのは、お金や顧客に関わるものだけで足ります。
要点
決裁の地図は、止め方と代わりの通し方を同じ紙に書くものです。人の承認は、お金と外に出る操作に絞ります。
自社でやること
社長まで上げる操作を、支払い・外部への送信・顧客への回答などから3つまでに絞り、それ以外は部門長の判断で終えると書きます。セキュリティに関わる判断は、最後に人が確認します。
まとめ 承認・却下・例外を、同じ紙に置く
- 社長・部門長・担当の3層で置き場を分け、止める人の名前も書く
- 却下の条件と例外の上限を先に書き、認めた例外は記録して見直す
- 社長まで上げるのはお金と外に出る操作に絞り、禁止には代わりの通し方を添える
決裁の地図があると、試す速さと止める安全を両方守れます。11/3号で揃えた棚卸し・ルール・確認者も、この1枚に載せられます。
自社の決裁の地図を、1枚でどう切るか。一緒に描きます。
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