毎朝更新中小企業の経営者のための、AI活用誌No.007既刊 7号

AI LIFE

AIのある暮らしと仕事のマガジン。

AIリスクは、社長が決める。

No.007 7本のトピック読了目安 9分文 

AIリスクが10大脅威3位に。社長が先に決めておく3つのこと

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編で「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出で3位に。社長が先に決める「使うAIと入力情報」「確認する人」「責任者と連絡先」を、手引書をもとに整理します。

今号のテーマ、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」は、初選出で組織編3位です、手引書は、2026年7月に公開された実務向けの資料です、決めること1 使ってよいAIと、入れてはいけない情報を決める、決めること2 AIの答えを誰が確認し、どこで止めるかを決める、決めること3 責任者と、困ったときの連絡先を決める、まとめ 禁止ではなく、決めてから使う

今号のテーマ

AIを仕事で使うこと自体が、セキュリティの大きな論点になってきました。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日公開)では、組織向けの脅威の3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が入りました。

テーマで言う「AIの利用をめぐるリスク」は、この正式名称を指します。順位は、IPAの公式ページと「「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書[組織編]」で確認しました。

今日は、順位に驚くための話ではありません。中小企業の社長が、専門部署がなくても先に決めておけることを3つに絞ります。

1. 「AIの利用をめぐるサイバーリスク」は、初選出で組織編3位です

「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編は、次の順位です。

  1. ランサム攻撃による被害
  2. サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
  3. AIの利用をめぐるサイバーリスク

IPAの公式ページでは、この脅威の初選出年は2026年、取り扱いは「初選出」とされています(情報セキュリティ10大脅威 2026、2026年1月29日公開)。

プレスリリースでも、「組織編の3位に『AIの利用をめぐるサイバーリスク』が初めてのランクイン」と明記されています(プレス発表「情報セキュリティ10大脅威 2026」を決定、2026年1月29日公開)。

解説書が挙げるリスクは、大きく3つです(解説書[組織編])。

  • 職場に許可なくAIを業務利用し、情報漏えいにつながる可能性(シャドーAI)
  • 実在しない情報を対話型AIが生成する可能性(ハルシネーション)
  • AIを助力に得たサイバー脅威の増長

つまり、AIそのものが危ないという話ではありません。「許可なく使う」「答えを確認せず使う」「攻撃する側もAIを使う」という、使い方と備え方の問題です。

ここがポイント3位に入ったのは、AIを禁止すべきだという結論ではありません。使う前提で、会社の決めごとが追いついているかが問われています。

2. 手引書は、2026年7月に公開された実務向けの資料です

もう1つの出典が、「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」です。

IPAのページ「セキュリティ担当者のための生成AIセキュリティ」(最終更新日:2026年7月31日)からダウンロードできます。手引書本体の改訂履歴では、第1版が2026年7月31日に初版発行とされています。

作成は、IPA産業サイバーセキュリティセンターの中核人材育成プログラム9期生「セキュリティ担当者のための生成AIセキュリティ」プロジェクトです。IPAのサイトで公開されている実務資料として読みます。

内容は、全社AIガバナンス、AIシステムのライフサイクル、発生被害、固有リスク評価、対策の効果と残存リスクまでを扱っています。今日使うのは、その中でも社長が決める部分です。

ここがポイント手引書は、立派な体制を一度に作るための本ではありません。「最低限の内容から始め、継続的に更新していく運用が現実的」と書かれているとおり、小さく決めて直していく読み方ができます(手引書 第2章)。

3. 決めること1 使ってよいAIと、入れてはいけない情報を決める

1つ目は、現場任せにしないための線引きです。

決めるのは、この3点で足ります。

  • 会社が使ってよいAIの一覧(それ以外は業務で使わない)
  • 入れてよい情報と、入れてはいけない情報の線引き(例:公開情報、社内情報、機密情報、個人情報)
  • 新しいAIを使いたいときの申請と確認の流れ

根拠は、10大脅威の解説書が経営者層の対策として挙げる「未許可・未認可のAIサービス利用の禁止」「個人アカウントにおける業務利用の制限」「外部サービス利用時には入力データを学習対象から除外するオプトアウト設定の徹底」です(解説書[組織編])。

手引書も、全社AI利活用ガイドラインに「利用可能なAI」「データ入力基準」「禁止事項」を入れることを挙げています(手引書 第2章 表2-2)。

大事なのは、禁止だけで終わらせないことです。手引書は、シャドーAIは多くの場合、悪意ではなく業務上の必要から生じるとし、安全性を検証した組織公認AIの提供を対策の一つに挙げています。禁止一辺倒では、申告されない利用が増えるおそれがある、という指摘です。

ここがポイント「使うな」ではなく、「これを使いなさい」「ここまでは入れてよい」をセットで示す。社長が決めるのは道具の細部ではなく、この線引きです。迷ったときの相談先も、ここで一緒に決めておきます。

4. 決めること2 AIの答えを誰が確認し、どこで止めるかを決める

2つ目は、出力の確認と、止める場所です。

AIの答えには、事実と異なる内容がもっともらしく含まれることがあります。 解説書はこれをハルシネーションとして挙げ、生成結果の精査が求められるとしています(解説書[組織編])。

手引書も、ガイドラインの「出力結果の取扱い」として、人間による出力の事実確認と、第三者の権利侵害の確認を挙げています(手引書 第2章 表2-2)。

社長が決めておくのは、たとえば次の形です。

  • 対外的に出す文書、金額や契約に関わる内容は、必ず担当者以外も含めて人が確認してから出す
  • AIエージェントに任せる作業では、送信、削除、支払いなど元に戻しにくい操作の前で人が承認する
  • 確認した人が、事実、数字、固有名詞、相手先を確認したうえで進める

解説書も、決裁や承認プロセスについて、複数名によるチェックを規程化し運用を徹底することを、経営者層の対策として挙げています(解説書[組織編])。

AIエージェントを使う場合は、任せる権限の範囲もここに入ります。手引書は、AIシステムによる発生被害の一つとして「付与権限外の操作」を定義しています(手引書 第4章)。最初は読み取りや下書きまでに絞り、実行は人が承認する形が、決めごととして書きやすいはずです。

ここがポイントAIに任せる範囲と、人が最終確認する場所は分けて決めます。不確かな話は断定せず、セキュリティに関わる判断では、人が最終確認する前提を崩しません。

5. 決めること3 責任者と、困ったときの連絡先を決める

3つ目は、誰が決め、誰に相談するかです。

手引書は、全社的な意思決定を担うAI責任者の設置が望ましいとしつつ、その権限のすべてを新しく作る必要はなく、既存の責任者や報告の流れを応用できるとしています(手引書 第2章)。

中小企業なら、新しい役職を作ることが目的ではありません。社長自身、または社長が指名した1名が、次の役割を持つと決めれば始められます。

  • 使ってよいAIの追加や禁止を決める
  • 情報漏えいや誤情報など、問題が起きたときの連絡を受ける
  • 必要に応じて利用を止め、専門家や相談窓口につなぐ

解説書も、経営者層の対策として「トラブルの発生に備えた専門家、相談窓口の確保」を挙げています(解説書[組織編])。手引書も、ガイドラインにインシデント時の連絡先と連絡の流れを入れ、各部門からの相談窓口を置くことを挙げています(手引書 第2章)。

連絡先は、社内の責任者だけでなく、普段付き合いのあるIT支援者や専門家まで含めて、紙1枚に書いておきます。起きてから探すのでは遅くなるためです。

【架空の例】社員15名の会社で、責任者を社長、実務の相談窓口を総務担当1名としたとします。使ってよいAIは会社契約の1つだけ、顧客名と未公開の金額は入力禁止、見積書はAIで下書きし営業責任者が数字を確認してから送る、問題が起きたら総務担当を経て社長と外部のIT支援者に連絡する。これだけでも、現場が迷ったときの動き方は決まります。実在の会社の例ではありません。

ここがポイント責任者は「詳しい人」である必要はありません。決める人、連絡を受ける人、外部につなぐ人を、名前で決めておくことが決めごとです。

まとめ 禁止ではなく、決めてから使う

「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編で、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」は初選出で3位に入りました(情報セキュリティ10大脅威 2026)。

社長が先に決めておくことは、難しい技術の選定ではありません。

  1. 使ってよいAIと、入れてはいけない情報
  2. AIの答えを誰が確認し、どこで止めるか
  3. 責任者と、困ったときの連絡先

この3つが決まれば、AIを使うことと、安全に使うことを両立させる入口に立てます。決めた内容が自社に合っているかは、運用しながら見直し、最後は人が確認して決めましょう。

自社だと、どこまでAIに任せてよいか。一緒に整理します。

Next Stepこの号を読んだあとに

自社でAIをどう使うか、一緒に考えませんか。

記事で気になった事例を、御社の業務にどう落とし込むか。個別の作戦会議と、編集者による日々の発信をご用意しています。

  • フォームから申し込めます。現状の業務を伺い、AIで何から始めるかを一緒に整理します(オンライン・20分、大阪市内は対面可)。

    AI導入の作戦会議を申し込む(無料)
  • 小畑タカユキをフォローする

    AIを前提にした仕事の進め方を、毎日発信しています。