
AIを使う会社の半数超に社内ルールなし。国のガイドラインはどこから読む?
日本商工会議所の調査では、生成AIを活用している企業の53.2%が社内ルールを整備できておらず、最多の理由は「何を参考にしたらよいかわからない」。国の「AI事業者ガイドライン」は分厚い本編からではなく、「活用の手引き」の準備事項と、利用者向けの第5部から読むと、A4一枚のルールに落とし込めます。
今号のテーマ、生成AIを使う会社は半数を超えた、使っている会社の半数超が、ルールを整備できていない、課題の上位にも「教育とルール」が並ぶ、国の「AI事業者ガイドライン」は、全部読まなくていい、読む順番は「手引き」→「第5部」→「チェックリスト」、まとめ ルールの材料は、もう国が用意している
今号のテーマ
10月15日号では、AIを使う会社は増えても、社内ルールが追いついていないことを見ました。 今日は、その「ルールを作りたいが、何を見ればいいかわからない」という声に答えます。
参照するのは、日本商工会議所の「LOBO調査(2026年8月調査結果)」です。 全国321商工会議所の会員2,396社に配り、1,920社が回答しました(調査期間は2026年8月14日〜20日、8月31日公表)。
1. 生成AIを使う会社は半数を超えた
生成AIを「活用している」企業は54.4%でした。 内訳は、全社的に活用が11.5%、特定部門で活用が23.4%、希望者のみ活用が19.5%です。 2025年11月の前回調査(36.0%)から18.4ポイント増えています。
「今後活用を検討」の24.7%も合わせると、8割近い企業が生成AIに前向きです。
ここがポイント「希望者のみ活用」が約2割あります。会社として決めないまま、使う人だけが使っている状態です。ルールが必要になるのは、まさにこの段階です。
2. 使っている会社の半数超が、ルールを整備できていない
生成AIを活用している企業に、社内ルール・ガイドラインの整備状況を聞いた結果です。
- 策定して運用している(策定中を含む)22.4%
- 専用のルールはないが、既存の社内規定で対応23.2%
- 今後作りたいが、何を参考にしたらよいかわからない34.9%
- 策定する予定はない、必要性を感じない18.3%
最も多いのは「何を参考にしたらよいかわからない」でした。 「予定はない」と合わせた53.2%が、ルールを整備できていません。
なお、この割合は「生成AIを活用している」と答えた企業が対象です。全回答企業の割合ではありません。
ここがポイント作る気がない会社より、作りたいのに手が止まっている会社のほうが多い。足りないのはやる気ではなく、読む資料の入口です。
3. 課題の上位にも「教育とルール」が並ぶ
生成AIを活用するうえでの課題(複数回答)は、次の順でした。
- 活用できる業務の洗い出し、活用方法の検討 53.3%
- 社員教育、社内ルールの制定 40.5%
- 活用を主導・推進する人材の育成・確保 39.0%
- 生成された情報の正確性の担保、ファクトチェックの徹底 37.9%
- 入力した内容が外部に漏洩するリスクへの対策 32.5%
4位と5位は、ルールで先に決めておける内容です。 誰が出力を確認するか、何を入力してはいけないかを決めておけば、課題の一部はルール作りの中で片づきます。
ここがポイントルール作りは、課題2位だけでなく4位と5位にも効きます。教育の前に「何を守ってもらうか」を一枚にしておくと、教える内容もはっきりします。
4. 国の「AI事業者ガイドライン」は、全部読まなくていい
参考にする資料の代表は、総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」です。 最新は第1.2版(2026年3月31日公表)で、本編と別添に分かれています。
いきなり本編を開くと、分量で手が止まりがちです。 同じページで公開されている「AI事業者ガイドライン活用の手引き(案)」(2026年3月)には、前提として次のことが書かれています。
- ガイドラインは義務を課すものではなく、リスクを認識して自主的に対策するための考え方を示したもの
- 書いてあることを全部そのまま自社に当てはめるのではなく、事業規模や状況に合わせて過不足なく対応することが重要
中小企業にとっては心強い前提です。 大企業と同じ体制を作る必要はありません。
ここがポイントガイドラインは「守らないと違反」の法律ではありません。自社に必要なところだけを拾って使う、参考書として読むのが正しい使い方です。
5. 読む順番は「手引き」→「第5部」→「チェックリスト」
ここからは、AI LIFEとしてのおすすめの読み方です。
① 手引きの3章「AIガバナンス構築時の準備事項」はじめに着手すること4つが、1項目1ページ程度でまとまっています。
- 社内で、誰が・何の目的で・どのAIを・どんなデータで使っているかを把握する仕組み
- リスクの相談先と、相談が必要な場合・セルフチェックでよい場合の基準
- 問題が起きたときの連絡先と、対応の流れ
- 社内向けのルールを明文化し、周知する
手引きには「既存の体制があれば、必ずしもAI活用のために体制を新規に構築する必要はありません」とも書かれています。 相談先も連絡先も、いまある社内の担当や窓口を活かす形でかまいません。
② 本編の第5部「AI利用者に関する事項」ガイドラインは、AIを開発する側・提供する側・利用する側の3つに分けて書かれています。 AIサービスを業務で使うだけの会社なら、まず読むのは「利用者」向けの第5部です。 短い章で、たとえば次のような事項が挙がっています。
- 提供者が定めた利用上の注意点や規約を守り、想定された範囲で使う
- 出力の精度やリスクの程度を理解したうえで使う
- 個人情報や機密情報を不適切に入力しない
③ 別添7のチェックリスト「チェックリスト(別添7)」は、共通の考え方を確認項目の形にまとめたものです。 ルールを作ったあと、抜けがないかを見直す用途に向いています。
ここがポイント①で「何を決めるか」、②で「利用者として守ること」、③で「抜けの確認」。この順なら、本編を通読しなくてもルールの骨組みが作れます。
まとめ ルールの材料は、もう国が用意している
調査が示しているのは、AIを使う会社の多くが、ルールを作りたいのに入口で止まっているということです。 その入口として、国のガイドラインには中小企業でも使える読み方の手引きがあります。
まずは手引きの準備事項4つと第5部を読み、10月15日号でお伝えした「A4一枚のルール」に書き写してみてください。 最後に、作ったルールが自社の実態に合っているかは、人が確認して決めましょう。
ガイドラインのどこを自社のルールに使うか、一緒に整理します。
Next Stepこの号を読んだあとに
自社でAIをどう使うか、一緒に考えませんか。
記事で気になった事例を、御社の業務にどう落とし込むか。個別の作戦会議と、編集者による日々の発信をご用意しています。
フォームから申し込めます。現状の業務を伺い、AIで何から始めるかを一緒に整理します(オンライン・20分、大阪市内は対面可)。
AI導入の作戦会議を申し込む(無料)小畑タカユキをフォローする
AIを前提にした仕事の進め方を、毎日発信しています。