毎朝更新中小企業の経営者のための、AI活用誌No.006既刊 6号

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No.006 8本のトピック読了目安 7分文 

中小企業のAI活用は約3割。進まない理由は「業務がイメージできない」

中小企業白書では、省力化投資に取り組んだ事業者のうちAI活用は30.3%。未活用の理由で最も多いのは「活用する業務がイメージできていない」63.4%でした。情報通信白書の数字とあわせ、個人利用を会社の取組に変えるための業務の棚卸しを整理します。

今号のテーマ、AI活用に取り組んだのは約3割、進んでいるのは、バックオフィスと営業まわり、未活用の理由1位は「活用する業務がイメージできていない」、個人では使えても、会社の取組になっていない会社がある、研修や勉強会がある会社ほど、「想定した効果が得られなかった」が少ない、個人利用を会社の取組に変える、3つの進め方、まとめ 壁は「使い道を具体的に描けるか」

今号のテーマ

きのうは、社内ルールを作るときに国のガイドラインをどこから読むかを見ました。 今日は一歩戻って、中小企業のAI活用がどのあたりまで進んでいるかを確認します。

参照するのは、中小企業庁の「2026年版中小企業白書」(2026年4月24日閣議決定、経済産業省の発表)と、総務省の「令和8年版情報通信白書」です。

2つの白書では、AIの範囲も、調査の対象も違います。 数字を並べるときは、その違いを先に押さえておきます。

1. AI活用に取り組んだのは約3割

中小企業白書の第2部第2章第2節「労働投入量の最適化」では、省力化投資のうち、AI活用の取組状況を確認しています(第2-2-87図)。

2019年以降に省力化投資に取り組んだ事業者5,645社のうち、AI活用に「取り組んだ」のは30.3%でした。

ここでいうAIは、生成AIだけではありません。 白書では、画像認識、音声認識、自然言語処理、データ分析、意思決定支援、生成AIなどを指す、と定義しています。

また、この30.3%は中小企業全体の割合ではありません。 省力化投資に取り組んだ事業者の中での割合です。省力化投資をしていない事業者は、この数字には入っていません。

ここがポイント「約3割」は出発点の目安です。自社と比べるときは、まず「何らかの省力化に取り組んできたか」という前提までそろえて読む必要があります。

2. 進んでいるのは、バックオフィスと営業まわり

AI活用に取り組んだ事業者に、部門ごとの状況を聞いた結果です(第2-2-88図。「該当部門はない」と答えた事業者は除きます)。

  • バックオフィス部門73.4%(1,577社)
  • 営業・販売・顧客対応部門68.2%(1,605社)
  • 製造・生産管理・物流部門57.2%(1,210社)

いずれの部門でも、「必要性を認識しているが、活用には至っていない」と答えた事業者が一定程度ありました。 製造・生産管理・物流部門では、その割合が31.2%と、3つの部門の中では最も高くなっています。

活用の目的では、「業務時間の節減」が84.5%で最も多く、「人手不足の解消」40.5%、「業務の属人化解消」40.1%と続いています(第2-2-89図、AI活用に取り組んだ事業者1,685社・複数回答)。

ここがポイント先に進んでいるのは、文書作成や要約、情報整理といった、言葉や資料を扱う仕事が多い部門です。現場に近い部門ほど、「必要だが、まだ当てはめ方を決めていない」状態が残っています。

3. 未活用の理由1位は「活用する業務がイメージできていない」

省力化投資に取り組んだものの、AIは活用していない事業者3,888社に、その理由を聞いた結果です(第2-2-92図・複数回答)。

  1. 活用する業務がイメージできていない 63.4%
  2. 活用を推進する人材が不足している 40.0%
  3. 社内ルール・ガイドラインが整備されていない 26.2%
  4. セキュリティ・情報漏えいへの不安がある 14.5%
  5. 必要な予算を確保できない 13.8%

最も多いのは、費用や道具の話の前に、「自社のどの業務に当てはめるか」が見えていないことでした。

この設問の対象は、すでに省力化投資には取り組んだ事業者です。 何も投資をしていない事業者全体の理由として読むことはできません。それでも、投資に踏み出した会社の中でも、使い道の具体化で止まる会社があることは読み取れます。

ここがポイント止まっている理由の中心は、ツールの性能だけではありません。「今週やっている業務の、どの手順に当てはめるか」を言葉にできるかどうかです。

4. 個人では使えても、会社の取組になっていない会社がある

総務省の令和8年版情報通信白書では、見え方が少し変わります。

生成AIの活用方針について、「積極的に活用する方針である」と「活用する領域を限定して利用する方針である」を合わせた割合は、中小企業で58.1%、大企業で74.0%でした(生成AIの活用方針等)。

一方、生成AIによる業務変革などについて「組織的な取組はない」と答えた割合は、日本全体で27.0%でした。 企業規模別では、中小企業で45.6%、大企業で18.1%と差があります(組織的な取組状況、図表のCSVデータ)。

同じ白書の別の設問では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた割合が86.4%となっています(生成AIの業務利用状況)。

ただし、この調査は、従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取組を始めた企業に勤める管理職以上の方を対象にしたものです。日本の有効回答は515件で、そのうち中小企業に分類された回答は162件です(付注)。 86.4%という数字も、活用方針の設問で「わからない」と答えた方を除いて集計されています。

中小企業白書の30.3%と、情報通信白書の86.4%を、そのまま比べることはできません。 対象も、AIの範囲も、答え方も違うためです。

それでも、2つの調査を並べると、個人や一部の業務では使い始めていても、会社としての進め方までは決まっていない会社がある、という読み方はできます。これは調査が直接示した結論ではなく、AI LIFEとしての読み方です。

ここがポイント「誰かが使っている」と「会社として取り組んでいる」は、別の状態です。方針、担当、学ぶ場の3つがそろって初めて、個人の工夫が会社の取組に近づきます。

5. 研修や勉強会がある会社ほど、「想定した効果が得られなかった」が少ない

中小企業白書では、従業員のAI活用を進めるための研修会や勉強会の実施状況別に、AI活用の評価も比べています(第2-2-91図)。

  • 研修会や勉強会に取り組んでいる事業者(920社)「想定を超える効果が得られた」12.2%、「想定した効果が得られた」79.2%、「想定した効果が得られなかった」8.6%
  • 取り組んでいない事業者(789社)「想定を超える効果が得られた」11.8%、「想定した効果が得られた」72.1%、「想定した効果が得られなかった」16.1%

「想定を超える効果」の割合は、どちらも12%前後で大きな差はありません。 差が出ているのは、「想定した効果が得られなかった」の割合です。

白書は、AI活用にあたって研修会や勉強会もあわせて実施することが重要であると「示唆される」と書いています。 勉強会をしたから効果が出た、と確かめた調査ではありません。もともと進め方が整っている会社ほど、勉強会もしている可能性はあります。

ここがポイント学ぶ場の役割は、使い方を教えることだけではありません。「どの業務で試すか」「うまくいかなかったときに何を直すか」を、社内で同じ言葉で話せるようにすることです。

6. 個人利用を会社の取組に変える、3つの進め方

ここからは調査の数字ではなく、AI LIFEとしての整理です。

手順1 まず、今週の業務を書き出す

「AIで何ができるか」から始めると、使い道が浮かびにくくなります。 先に、毎週くり返している業務を部門ごとに書き出します。そのうえで、文書を作る、要約する、情報を整理する、といった手順が含まれているものを探します。

手順2 対象を1つに絞り、確認する人を決める

最初から全部門に広げる必要はありません。 バックオフィスや営業まわりで進んでいる例が多いように、言葉や資料を扱う業務から1つ選びます。AIが出したものを誰が確認してから使うかも、試す前に決めておきます。

手順3 学ぶ時間を、試す業務とセットにする

研修や勉強会は、一般的な使い方を聞くだけで終わらせないほうが使いやすくなります。 選んだ業務を持ち寄り、「どこまでAIに下書きさせたか」「人がどこを直したか」を短時間で共有する形にすると、次の業務への当てはめ方も考えやすくなります。

【架空の例】社員18名の会社で、営業担当の週報作成を対象にしたとします。担当者がAIで要約の下書きを作り、営業責任者が数字と顧客名を確認してから共有する。週1回15分だけ、直しが多かった点を全員で見直す。4週間続けて、作成時間と直しの回数を記録し、続けるかを判断します。実在の会社の例ではありません。

まとめ 壁は「使い道を具体的に描けるか」

中小企業白書が示しているのは、AI活用に取り組んだ事業者が約3割にとどまり、未活用の理由では「活用する業務がイメージできていない」が最も多い、ということです。 情報通信白書では、中小企業で「組織的な取組はない」と答えた割合が45.6%ありました。

道具を増やす前に、まず今週の業務を書き出し、当てはめる手順を1つ決める。 個人の試用を会社の取組に変える入口は、そこにあります。

自社の業務だと、どこからAIを当てはめられるか。一緒に整理します。

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