毎朝更新中小企業の経営者のための、AI活用誌No.009既刊 9号

AI LIFE

AIのある暮らしと仕事のマガジン。

ノートと朱の鉛筆、白い紙5枚の静物。見出し『今週の仕事から、聞く。』

No.009 7本のトピック読了目安 5分文 

AIで「何をするか」より「今週やった業務」から。社内ヒアリングのやり方

AIの使い道は、社員に「AIで何をしたいか」と聞いても見つかりにくいものです。聞くのは「今週やった業務」。準備、当日の5つの質問、聞いたあとの手順の分け方、最初に試す1つの選び方まで、社内ヒアリングの進め方を整理します。

今号のテーマ、「AIで何をしたいか」と聞くと、話が止まります、準備 聞く相手と時間と、最初に伝えることを決める、当日 聞くのは5つだけ、聞いたあと 仕事を手順に分け、AIに頼めそうな所に印をつける、最初に試すのは1つだけ。話してくれた本人と決める、まとめ 使い道は、今週の仕事の中にある

今号のテーマ

きのうは、新人にAIの使い方をどう渡すかを考えました。 今日はその手前の話です。AIを会社のどの業務に使うかを、どう見つけるかです。

10月15日号と10月19日号で見た2つの調査では、AIを使っていない理由で最も多かったのは、どちらも「どの業務に使うかがイメージできない」という趣旨の答えでした。 日本商工会議所の「LOBO調査(2026年8月調査結果)」でも、生成AIを活用するうえでの課題で最も多かったのは「活用できる業務の洗い出し、活用方法の検討」でした。

使い道は、AIにできることの一覧を眺めても見つかりにくいものです。見つかるのは、社員がふだんやっている仕事の中です。 今日は、それを聞き出す社内ヒアリングのやり方を、手順にして整理します。ここから先は調査の数字ではなく、AI LIFEとしての整理です。

1. 「AIで何をしたいか」と聞くと、話が止まります

社員に「AIで何をしたいですか」と聞くと、たいてい答えに詰まります。 AIで何ができるかを知らなければ、答えようがないからです。

返ってくる答えはだいたい2つに分かれます。「特にありません」か、ニュースで見た大きな話です。どちらも、来週から試せる業務にはつながりません。

聞き方を変えます。「今週、何の仕事に時間がかかりましたか」。 これなら、AIに詳しくない人でも答えられます。聞いているのは事実なので、答える側も構えずにすみます。

ここがポイントAIに当てはめる判断は、聞く側があとで行います。話してもらうのは、AIの話ではなく、仕事の話です。

2. 準備 聞く相手と時間と、最初に伝えることを決める

ヒアリングの前に、3つだけ決めておきます。

  • 聞く相手:部門ごとに1〜2人。AIをよく使う人と、ほとんど使わない人の両方を選ぶ
  • 時間:1人15〜20分。会議室でもオンラインでもよい
  • 最初に伝えること:仕事ぶりの評価や人を減らすための話ではないこと。手間のかかる仕事を軽くする場所を探していること

もう1つ、相手に頼んでおくことがあります。今週のカレンダーや、送ったメール、作った資料を見ながら話してもらうことです。 記憶だけで話すと、目立つ仕事だけが出てきます。毎週くり返している小さな作業ほど、記録を見ないと思い出せません。

聞き手は、社長でも、社長が任せた1人でもかまいません。部門の上司が聞くと本音が出にくい場合は、別の部門の人が聞くほうが話しやすくなります。

ここがポイント「評価のためではない」は、最初にはっきり言葉にします。ここがあいまいだと、手間のかかる仕事ほど話してもらえません。

3. 当日 聞くのは5つだけ

質問は次の5つで足ります。

  1. 今週、時間がかかった仕事を3つ挙げてください
  2. その仕事は毎週や毎月くり返しますか
  3. その仕事では何を見て、何を作りましたか(元になる資料と、できあがったもの)
  4. どこで手が止まりましたか(探す、読む、書く、まとめる、写す、確かめる、のどれに近いか)
  5. その仕事を人に頼むとしたら、どう説明しますか

3つ目と4つ目が、いちばん大事な質問です。 「見積書を作った」だけでは、AIをどこに使えるかはわかりません。「過去の見積書を探すのに時間がかかった」「依頼メールを読んで条件を拾うのが面倒だった」まで聞くと、当てはめる場所が見えてきます。

5つ目は手順を言葉にできるかを確かめる質問です。人に説明できる仕事は、AIへの頼み方も書きやすくなります。

聞いている間は、「それはAIでできますね」と言わないようにします。その場で判断を始めると、相手はAIに合いそうな話を選んで話すようになります。

ここがポイントメモは、相手の言葉のまま残します。「時間がかかった」「面倒だった」という言い方の中に、どこを軽くすればよいかの手がかりがあります。

4. 聞いたあと 仕事を手順に分け、AIに頼めそうな所に印をつける

ヒアリングが終わったら、聞いた仕事を手順に分けて書き出します。 仕事をまるごとAIに任せるかどうかを考えるのではありません。手順の中から、AIに下書きを頼める箇所を探します。

たとえば「見積書の作成」なら、次のように分けられます。

  • 依頼メールを読み、条件を拾い出す
  • 似た案件の過去の見積書を探す
  • 金額を計算する
  • 送付メールの文面を書く
  • 上司が確認する
  • お客様に送る

印をつける目安は創刊号で挙げた4つです。くり返しが多い、文章や資料が中心、人が見直してから外に出せる、担当者がやり方を説明できる。 この例なら、「条件を拾い出す」と「送付メールの文面を書く」が候補になります。

金額を決めることと、お客様に送ることには印をつけません。10月20日号で見たとおり、金額や対外的な文書は人が確認してから出し、送信のように元に戻しにくい操作の前では人が承認する、という決めごとが先にあるからです。顧客の個人情報を入力する手順になっていないかも、ここで確かめます。

ここがポイント仕事の名前ではなく、手順の単位で見ると、AIに頼める所と人が持つ所を分けやすくなります。

5. 最初に試すのは1つだけ。話してくれた本人と決める

印のついた手順が集まったら、最初に試すものを1つに絞ります。 選ぶときは、くり返す回数が多いものと、AIの出した下書きを確かめやすいものを優先します。

決めたら、話してくれた本人に伝え、どの手順をどんな形で試すかを一緒に決めます。 自分の話が使われたとわかれば、次のヒアリングでも話してもらいやすくなるはずです。

試し方は10月15日号と10月19日号の例と同じ形です。

  • その手順では毎回AIで下書きを作る
  • 4週間続けて、かかった時間と、直した回数を記録する
  • 4週間後に、続けるか、やめるか、手順を変えるかを決める

【架空の例】社員12名の会社で、営業2名と事務1名に15分ずつ話を聞いたとします。営業の1人が今週時間のかかった仕事に挙げたのは、問い合わせメールへの返信でした。手順に分けると、時間を取っていたのは「よくある質問への回答文を毎回一から書く」ところでした。そこで、会社が契約したAIで返信の下書きを作り、本人が内容を確かめ、上司も目を通してから送る形を4週間試すことにします。顧客の名前や連絡先は入力しない決まりです。実在の会社の例ではありません。

ここがポイントヒアリングは一度で終わらせません。3か月に1回ほど同じ5つの質問をすると、試した手順の結果と、次の候補が一緒に集まります。

まとめ 使い道は、今週の仕事の中にある

AIの使い道が見つからないのは、探す場所がAIの側にあるからかもしれません。 探す場所を、社員が今週やった仕事に移します。

  1. 準備:聞く相手、時間、最初に伝えることを決める
  2. 当日:今週の仕事について、5つの質問だけをする
  3. 聞いたあと:仕事を手順に分け、AIに頼めそうな所に印をつける
  4. 最初の1つ:話してくれた本人と決めて、4週間試す

道具選びはそのあとで十分です。AIの下書きを使う手順でも、最後に確かめて決めるのは人です。

自社の業務だと、誰に何から聞けばよいか。一緒に整理します。

Next Stepこの号を読んだあとに

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